宮崎医科大学 耳鼻咽喉科学教室 松田圭二先生より、投稿していただくことになりました。
 お楽しみにしていてください。

松田先生は、釣りが大好きで大変気さくな先生です。


  宮崎医科大学 耳鼻咽喉科学教室 松田圭二




第1回 かぜは万病のもと〜かぜから起こる耳、鼻の病気

鼻咽喉科を受診するこどもさんの病気は、ほとんどが感染症(細菌・ウイルス)です。「かぜ」とは上気道炎、つまり鼻、のどの炎症のこと。耳・鼻・のどの病気が、「かぜ」から起こりやすいのは、これらがお互いにつながっているからです。

表的な病気としては、

1)急性中耳炎〜耳が痛い!
耳は耳管で鼻の奥に通じています。耳管から中耳にバイ菌が入り、膿がたまって痛いのが急性中耳炎です。

症状: かぜ症状に続く激しい耳痛が特徴です。小児では高熱、下痢などの全身症状を伴うこともあります。自分で痛みを訴える事ができない乳幼児でも手を耳にもっていく、機嫌が悪い、夜中に急に泣き出すなどの症状があります。
診断: 鼓膜は腫れて真っ赤っかです。鼓膜の向こう側には膿がたまっています。
治療: 膿がたまっているときには、鼓膜を少し切って(鼓膜切開という)膿を外に出してやるのが原則です。
切開により鼓膜の膨隆がとれるため耳痛は消失し、熱も下がります。抗生物質の内服だけの治療に比べ治癒までの期間は短くなり滲出性中耳炎への移行も少なくなります。
鼓膜切開による穿孔は通常数日以内に自然閉鎖し後遺症を残すことはありません。
経過: 鼓膜切開、抗生物質内服で耳痛・耳漏は数日で消失し、通常は10日前後で治癒します。
中耳炎をしょっちゅう繰り返す子どもさんでも8歳以上になると発症は激減します。



2)急性・慢性副鼻腔炎(ちくのう症)〜あおっぱなが出る!
 鼻腔とは鼻と通じた頭蓋骨内の空間で、ほっぺた、目と目の間、おでこ、鼻の奥の方に位置し通常は空気が入っています。副鼻腔に炎症が起こり膿がたまったものがこの病気で、俗に「ちくのう症」と言われています。

症状: かぜは治ったのに、いつまでも鼻漏(あおっぱな)が続く。鼻がつまり、頭や眉間が重く、頭痛、咳(鼻漏がのどに流れ込むことによる)などがみられます。
診断: 鼻の中をみると副鼻腔の出口から膿がでてくるのが観察できます。口を開けると後ろの壁に黄色い鼻漏の付着(鼻漏が鼻からのどに落ちてくる所見・後鼻漏という)があります。レントゲンで空気は黒く写るため、正常の副鼻腔は黒っぽくみえますが、膿がたまると白く写りそれとわかります。
治療: 大抵はお薬で治ります。慢性の場合、マクロライド系抗生物質の内服を2〜3カ月間続けると良い結果になることが多いようです。しかし、鼻茸(ポリープ)形成などがあれば手術が必要になります。ただし手術は頭の骨が十分発育する15・6歳以降に行うのが普通です。最近は内視鏡手術(鼻から小さなカメラを入れてテレビモニターを見ながら行う手術)が主流になりました。上唇の中側から切開して行う上篩根本手術が必要になるケースは少なくなっています。


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